【最初で最後の夏休み】『みいちゃんと山田さん』4巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

1巻ではみいちゃんの「死」、2巻では「出生の秘密」、3巻では「中学時代の初恋」が描かれてきた『みいちゃんと山田さん』。

 

1〜3巻のネタバレ・感想はこちら。

【死ぬまでの12か月】『みいちゃんと山田さん』1巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

【出生の秘密】『みいちゃんと山田さん』2巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

【歪んだ初恋】『みいちゃんと山田さん』3巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

 

で、4巻。

過去編が終わって、物語はいよいよ「現在」へ。季節は夏。

夏ってことは……

1巻の冒頭を読んでいる人なら、この時点でもう嫌な予感しかしないと思う。

4巻では、山田さんとみいちゃんの夏祭り、山田さんの家庭の事情、そして「夜の沼」へさらに堕ちていくみいちゃんが描かれる。レビューでも「1〜4巻でいちばんキツい」という声と、「最後はスカッとした」という声が両方あって、感情の振れ幅がとにかく大きい巻だった。

 

 

今回もそんな『みいちゃんと山田さん』4巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。

いつも通り、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事ではないのでご了承を。
見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。

 

 

 

『みいちゃんと山田さん』第4巻の基本情報

歌舞伎町のキャバクラで働くみいちゃんは、常識知らずで、“ヤバい” 女の子。そんな彼女の生い立ちに興味を持った山田さんは、過去の記憶の断片に、静かに耳を傾ける。まるで別々の世界で育った二人が、東京で出会った偶然。この奇跡を噛みしめるように、正反対な二人は距離を縮めていく。その一方で、DV彼氏・マオ君との関係を断ち切れないみいちゃんは、また一歩、夜の沼へと堕ち――――山田さんの前から姿を消してしまう。大人になれない大人達の、最初で最後の夏休みが始まる。

「みいちゃんと山田さん(4)」_講談社

 

収録されているのは第17話〜第21話と、特別編「あの激情はどこへやら」。表紙はモモさんとココロちゃん。

 


 

 

『みいちゃんと山田さん』4巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想

4巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。

 

浴衣と花火と、山田さんの夢

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

4巻は8月、お店の浴衣イベントから始まる。

みいちゃんは、生まれて初めて浴衣を着たらしい。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

……これ、さらっと描かれてるけど、2巻・3巻を読んだあとだとけっこう刺さる。浴衣を着せてあげる大人が、みいちゃんのそばにはいなかったってことか…。

 

ひょんなことから来週花火大会があることを知った山田さんは、みいちゃんを誘ってみると…

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

ということで、2人で浴衣を着て花火大会へ。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

めずらしく元気のないみいちゃん。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

…

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

長い人生だし生きてる途中なら

その時点では幸せでも不幸でもどちらでもいいと思う

ここ感動パート。

山田さんが「幸せ」について語る場面が印象的。

まだ21歳だし、途中の時点で幸せか不幸かなんてどっちでもいい。おばあちゃんになって振り返ったときに「まあまあいい人生だったな」と思えたらいいよね、と。

 

花火を見ながら、山田さんは「漫画家になりたい」という夢をみいちゃんに打ち明ける。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

自分が描いたものを、誰かが読んで楽しんでくれる。それが自分の幸せなんだ、と。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

山田さんとの対比がすごい。

すごくいい言葉なんだけど、花火を背にキラキラしている山田さんのコマのあとに、目の下にクマのあるみいちゃんのコマが置かれていて……。

今まさに読んでるのが、その漫画なのでは……?

となった。山田さんが作者自身の分身なんじゃないか、という考察がレビューにも多かったけど、このシーンを読むとそう思いたくなる。みいちゃんには「おばあちゃんになって振り返る日」は来ないことを、読者だけが知っている。この対比がゾッとさせられて良かった。

 

 

突然いなくなるみいちゃんと、山田さんの母親

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

楽しかった夏祭りのあと、みいちゃんは突然お店を辞めてしまう。山田さんとも連絡が取れなくなる。

 

そして、ここで登場するのが山田さんの母親。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

「一人暮らしするなら毎日連絡するって約束だったでしょ」

の一文で子離れできていない感が醸し出てるのスゴイ。これまでもちらっと描かれてきた「教育熱心な母親」が、ついに本格的に登場するんだけど……これがなかなか強烈。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

山田さんの部屋の前で何時間も待っていたり、都合も聞かずに料理を作ったり、娘の進路を当然のように自分で決めようとしたり。

 

うわぁ……

みいちゃんに背中を押されるように、山田さんは母親に「漫画家になりたい」と伝える。でも、

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

返ってきたのはバッサリとした否定。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

みいちゃんは「教育を放棄された」子。

山田さんは「教育を押しつけられた」子。お母さんが喜ぶよう、自分の人生を使って演技してきた山田さん。よき娘であろうと演技している自分に対する嫌悪感を抱きながらも何かを決心した様子だった。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

方向は真逆だけど、どちらも「親に自分を見てもらえなかった」という意味では似ているのかもしれない。山田さんがなぜみいちゃんに惹かれるのか、その理由がまたひとつ見えた気がした。

 

 

包丁を持ったシゲオ、来店

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

2巻から出ているお客さんのシゲオも再登場。

キャバクラを辞めたみいちゃんの日記(風俗店の写メ日記)を読んで思い詰めたシゲオは、なんと包丁を持ってお店に乗り込んでくる。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

…

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

……なんだけど、どこか締まらないのがシゲオ。

包丁を持っているのに弱々しくて、周りのツッコミも含めて、不謹慎だけどちょっと笑ってしまった。幸い、誰もケガはしなかった。

 

重たい展開が続く中で、こういう“抜け”のシーンがあるのがこの作品のうまいところだと思う。

 

 

夜の沼へ堕ちていくみいちゃん

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

モモさんの情報網によって、みいちゃんの居場所がわかる。

みいちゃんが働いていたのは、新大久保の過激な風俗店だった。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

みいちゃんは「NGなし」として、ほかの子が嫌がるような客を次々と押しつけられる。

さらには簡単な計算もできないからと給料は店長にピンハネされ、ごまかされていても、みいちゃんにはそれがわからない。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

店長は「本人が嫌がっていないんだから、こちらが止めるのも変」と言う。

判断できない人に判断を押しつけて、責任は取らない……

とも思うが、そもそも店長たちは「人」として扱っていない。

 

人間として扱っているのではなく、商品として扱う。

現代の奴隷ビジネスじゃないの…。

「本人が同意しているから」という言葉が、いちばん残酷な搾取の言い訳になっている。この構図がキツイ。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

都合が悪い話には耳を傾けない徹底っぷり。ある意味プロフェッショナル(クズの)。

 

 

ツバサくん

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

特にレビューで「一番キツかった」という声が多かったのが、ツバサくんの話。

重い知的障害がありそうな息子のために、母親が年金を貯めて女の子を呼ぶ。鉄道模型に埋め尽くされた部屋で、みいちゃんはその相手をすることになる。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

障害のある人の性、それを支える(支えきれない)家族、そこに巻き込まれるみいちゃん。

誰が悪いと簡単に言えないぶん、読んでいて胸糞だった。

 

 

マオくん、まさかの結末

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

そして、みいちゃんをこの沼に沈めた張本人がDV彼氏のマオくん。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

(みいちゃんの顔に「ゆ虐」を感じる…)

 

そんなマオくんだが、

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

「みいちゃんに会う前は、俺はこんなに暴力的じゃなかった」

みたいなことを言うんだけど、

いや、自分より弱い相手をやっと見つけただけでしょ……

とツッコまずにはいられない。

自分の想い通りにならない相手に対して勝手にイライラしているだけの小心者にしか見えないと思うが、ただ程度の差はあれ、自分にもその傾向がないとは言えない気がして怖くなった。

 

ちなみにマオくんは色々画策するんだけど、ひょんなことから計画がご破算。大変なことになってしまう。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

レビューでも「ざまぁ」「声出して笑った」「ガッツポーズした」の嵐。4巻まで読んできて、初めてスカッとできる瞬間だった。

みいちゃんの「だらしなさ」が、人生で初めて役に立った瞬間でもあるのがまたいい。

 

ただ、手放しで喜べないのがこの作品。

1巻の冒頭で、みいちゃんが死ぬことはもう決まっている。マオくんがいなくなったことで、「じゃあ誰がみいちゃんを……?」という謎はむしろ深まってしまった。

 

 

特別編「あの激情はどこへやら」

巻末の特別編では、みいちゃんと同じ風俗店で働いていた女の子・まりあちゃんのその後が描かれる。

 

心を病んでいたまりあちゃんだけど、ルールを守れないみいちゃんとのやりとりがきっかけで、少しずつ変わっていく。そして特別編では、ちゃんと自分の生活を取り戻している。

 

2巻のニナちゃんと同じく、救われる子もいるんだと思えて、少しだけ心が軽くなった。

……そして、やっぱり「じゃあみいちゃんは?」と思ってしまう。

 

 

 

『みいちゃんと山田さん』
4巻の考察と感想

いちばん楽しい夏と、いちばん深い沼

そんな4巻だった。

 

浴衣で花火を見て、将来の夢を語り合う。4巻の前半は、この作品でいちばん“青春”している。

でもその直後に、みいちゃんはシリーズでいちばん深い場所まで堕ちていく。この落差がとにかくエグい。

 

 

一方で、4巻は山田さんの物語でもあった。

母親に縛られてきた山田さんが、みいちゃんに背中を押されて「漫画家になりたい」と口にする。みいちゃんが山田さんを救い、山田さんがみいちゃんを(一度だけ)救う。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第4巻

 

2人の関係が、ただの「同僚」から少しずつ変わっていくのが伝わってきた。素直になれない山田さんと、素直すぎるみいちゃんの対比が良い。

 

 

ちなみに4巻も、レビューでは評価が割れている。

「風俗パートは露悪ばかり」「障害者差別を助長しかねない」という厳しい声もあって、たしかに風俗店のパートはこれまでで一番キツい。読む人を選ぶのは間違いないと思う。ただ個人的には、「本人が嫌がっていないから」という理屈で搾取が正当化されていく怖さを描いたことには意味があると思う。

 

 

マオくんの件でスカッとしつつも、物語はもう夏。

1巻の冒頭で描かれた結末に向かって、確実に進んでいるのを感じる巻だった。

 

 

是非、本編でしっかりと読んでみてね。

それでは。



 

おすすめの記事