【歪んだ初恋】『みいちゃんと山田さん』3巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

1巻ではみいちゃんの「死」が、2巻ではみいちゃんの「出生の秘密」が明かされた『みいちゃんと山田さん』。

 

1巻・2巻のネタバレ・感想はこちら。

【死ぬまでの12か月】『みいちゃんと山田さん』1巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想

【出生の秘密】『みいちゃんと山田さん』2巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
で、3巻。

出生があれだったんだから、もうこれ以上の衝撃はないでしょ

と思っていたら、今回もしっかりしんどかった。

3巻ではみいちゃんの中学生時代と、「なぜみいちゃんは優しくされるために体を差し出すのか」が描かれる。今のみいちゃんを形づくった、いわば“根っこ”の話だ。

 

 

今回はそんな『みいちゃんと山田さん』3巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。

いつも通り、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事ではないのでご了承を。
見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。

 

 

 

『みいちゃんと山田さん』第3巻の基本情報

2012年、東京の片隅。トラブル続きの新人・みいちゃんは、失敗を繰り返しながらも、少しずつキャバクラの仕事に馴染んでいった。空回りしながらも笑顔を絶やさない姿を見て、みいちゃんを指名する客も増え始める。ぎこちないながらも、“夜の街”での居場所を見つけつつあった、ある日――――全身傷だらけのみいちゃんが、店に現れた。その姿に驚いた山田さんは、看護のため、みいちゃんの自宅を訪れる。そこで語られたのは、みいちゃんがまだ子どもだった頃の、誰にも話さなかった思い出だった――――。

「みいちゃんと山田さん(3)」_講談社

 

収録されているのは第12話〜第16話と、特別編「彷徨の時期」。さらに巻末には、『ケーキの切れない非行少年たち』の著者・宮口幸治先生と、作者・亜月ねねさんの対談も載っている。

 


 

 

『みいちゃんと山田さん』3巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想

3巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。

 

 

ムウちゃんに連れられて、中学校へ

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

2巻のラストで、小学3年生から学校に行かなくなってしまったみいちゃん。

そんなみいちゃんを中学校に連れ出してくれたのが、幼なじみのムウちゃんだった。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

ムウちゃんも、みいちゃんと同じようなハンデを抱えている。が、ここは明確に母親の違い。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

ムウちゃんのお母さんはムウちゃんを丸ごと愛して、ちゃんと向き合っているのが伝わってくる。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

…

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

ムウちゃんのお母さん、いい人すぎる…

同じようなスタート地点にいる2人なのに、ここから進む方向がどんどん分かれていく。3巻はみいちゃんとムウちゃんの対比としても読める巻だった。(表紙が2人なのも納得)

 

ちなみに、2人とも普通学級。小学校の須崎先生はみいちゃんのことを心配していたけど、

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

中学の先生はそこまで真剣に向き合ってくれなかった様子。

 

 

佐藤くんへの初恋

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

中学でみいちゃんは、初めての恋をする。相手は同級生の佐藤くん。

佐藤くんは、みいちゃんにも分け隔てなく優しくしてくれる男の子。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

…

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

 

佐藤くんに好かれたくて、みいちゃんの奇行は少しずつおさまっていき、友達もできる。

え、普通に青春してるじゃん…!

 

1巻からずっと「誰かがちゃんと手を差し伸べていれば」と思いながら読んできたけど、ここで初めて、好きな人ができるだけで、みいちゃんがこんなに変われるんだという可能性が見える。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

…

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

 

……まあ、この作品がそのまま終わらせてくれるわけがないんだけど。

 

 

「思春期の女の子の世界なんて一瞬でひっくり返る」

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

佐藤くんと仲良くするみいちゃんを、面白く思わない同級生の女子がいた。

その取り巻きの子が、みいちゃんをだまして陥れていく。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

だまされたみいちゃんは、クラスの中で一気に孤立してしまう。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

人間は叩く理由を見つけると

どこまでもどこまでも残酷になれる

 

みいちゃんは「なぜ自分が嫌われるのか」がわからない。だから、相手の悪意にも気づけない。

 

みいちゃんに意地悪をした側も、ただの「悪い子」として描かれていないのがこの作品らしいところ。好きな人のそばに、空気の読めない子がベタベタしていたら……と考えると、中学生の女子の反応としては、正直ありえてしまうのがキツい。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

せっかくできた友達も離れて行ってしまう。

 

 

「体を差し出せば優しくしてもらえる」

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

そして3巻でいちばん重いのがここ。

「みんなと仲良くなれる方法」を吹き込まれたみいちゃんは、男子たちから性被害を受けてしまう。

 

……。

 

本当に救いがないのは、みいちゃんの解釈。

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

みいちゃんはこの出来事を「被害」として受け取れない。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

それどころか、「体を差し出せば、みんなが優しくしてくれる」と学習してしまう。当然、佐藤くんからも嫌われる(というよりは興味を失われる)。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

1巻でみいちゃんが言っていた「エッチの時だけは対等に接してくれる」という言葉。

2巻で描かれた、DV彼氏から離れられない姿。

その全部が、ここにつながっていたんだと思うと、ページをめくる手が重くなった。

 

 

 

山田さんとイヤリング

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

逆にみいちゃんから自分のことを聞かれた山田さんは、自分を縛ってきた母親のことを思い出してしまう。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

勉強も就活も、母親の言う通りにしてきた山田さん。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

みいちゃんとは全然違う環境で育ったけど、山田さんもまた「自分の好きなように生きる」ことができなかった人なんだと思う。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

そんな山田さんが、みいちゃんが欲しがっていたピアスを、ペンチでイヤリングに作り変えてあげるシーンがある。

ここはほっこりした…

1巻では、どこか「面白い子」としてみいちゃんを見ていた山田さん。それが3巻では、はっきりとみいちゃんに寄り添う側になっている。山田さんがみいちゃんにかける「この世界は辛いことばかりじゃない、なるべく楽しく元気に生きていこうね」という言葉も、すごく優しい。

 

……なのに、その直後に場面が飛ぶ。

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

描かれるのは、みいちゃんが死ぬ直前と思われる場面。

そこには、さっき山田さんが使ったのと同じようなペンチが……。

え、ちょっと待って……?

この演出がこわい。

「誰がみいちゃんを殺したのか」の考察が難しい。

 

 

山田さん vs DV彼氏・マオくん

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

話は現在に戻って、みいちゃんの彼氏・マオくんが店にやってくる。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

めちゃくちゃ小心者…

 

閉店後、山田さんはマオくんに「みいちゃんをいじめないで」と釘を刺す。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

みいちゃんには暴力を振るうくせに、山田さんの前では肩をすくめて縮こまるマオくん。

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

自分より弱い相手にだけ強く出る男の描かれ方が、リアルすぎてゾッとする。

山田さん、よく言った!……と思ったのもつかの間。

 

 

引用:みいちゃんと山田さん 第3巻

 

山田さんに言われたことで、マオくんのみいちゃんへの当たりは、むしろ強くなってしまう。

ですよね……

 

正しいことをしても、それがみいちゃんを救うとは限らない。

2巻の須崎先生と同じで、「良心的な人」が手を差し伸べても届かない構図が、ここでもまた繰り返される。

 

 

 

巻末対談:宮口幸治先生 × 亜月ねねさん

3巻で個人的にいちばん驚いたのが、巻末の対談。

相手は、ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の著者・宮口幸治先生。

 

対談では、2巻の須崎先生の対応についても触れられていて、信頼関係を築く前に特別支援学級の話を切り出したのはまずかったのでは、という専門家ならではの指摘もあった。

 

須崎先生は「いい先生」だったけど、それでもやり方ひとつで結果は変わる。

マンガ本編とセットで読むと、見え方がかなり変わるのでおすすめ(マガポケの連載では読めない部分なので、単行本を買う理由にもなると思います)。

 

 

 

『みいちゃんと山田さん』
3巻の考察と感想

救われるルートが、ひとつずつ消されていく

そんな3巻だった。

 

小学校では須崎先生がいた。

中学では佐藤くんがいて、ムウちゃんがいた。そして今は山田さんがいる。

みいちゃんの人生には、ちゃんと手を差し伸べてくれる人がいたんだと思う。

でも、そのたびに周りの悪意や、家族の無理解や、みいちゃん自身の受け取り方のせいで、その手は届かずに終わってしまう。

 

2巻で「みいちゃんがこうなるしかなかった理由」がわかったとしたら、3巻は「今のみいちゃんの行動」がどこから来ているのかがわかる巻だと思う。

1巻で「なんでこの子はこうなんだろう」と思っていた行動の意味が、ここで一気につながっていく。

 

 

ちなみに3巻も、レビューでは評価が割れている。

初恋の相手もいじわるな同級生も“ポッと出”で、1・2巻より浅く感じたんだけど

偏見を助長しかねないでしょ、こんなの

という厳しい声もあった。

ただ個人的には、性被害を「被害」として認識できないまま大人になってしまう怖さを、ここまで真正面から描いたことに意味があると思った。

 

母親が避妊具の存在を知らなそうなのもなかなかこわい

 

そして、そんなみいちゃんに少しずつ寄り添っていく山田さんの存在が、この巻の唯一の救いだった。

 

 

正直、3巻はこれまでで一番読むのに体力がいる巻だと思う。気持ちが落ちているときには読まないほうがいいかもしれない。

でも、みいちゃんの「今」を理解するためには、絶対に避けて通れない巻だった。

 

 

是非、本編でしっかりと読んでみてね。

それでは。


 


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