
「こんなもん映像化するな」とまで言われている『みいちゃんと山田さん』。
1巻では、主人公のみいちゃんが若くして死ぬことが冒頭で明かされ、「ちょっと足りない」女の子が夜の街でどう生きているかが描かれた。
1巻のネタバレ・感想はこちら。
【死ぬまでの12か月】『みいちゃんと山田さん』1巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
で、2巻。
1巻でもだいぶしんどかったけど、さすがにこれ以上はないだろう
と思っていたら、全然そんなことはなかった。
2巻ではみいちゃんの「彼氏」と、みいちゃんの出生の秘密が明かされる。レビューを見ても「思わず声が出た」「ドン引きした」という感想がずらっと並んでいて、この巻の衝撃の大きさがわかる。
今回はそんな『みいちゃんと山田さん』2巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。
1巻と同じく、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事ではないのでご了承を。
このマンガの刺さり方は、実際にページをめくって味わってほしいので、見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。
『みいちゃんと山田さん』第2巻の基本情報

新人キャバ嬢のみいちゃんは、“ちょっと足りない”女の子。お客さんに本名をバラしたり、SNSに女の子の写真を無断であげたりトラブルメーカーとして敬遠されてしまう。危機感0、デリカシー0、忍耐力もちょっと低め。それでも山田さんは、みいちゃんから目が離せない。
収録されているのは第6話〜第11話と、描き下ろしの特別編「ニナちゃん36歳」。
『みいちゃんと山田さん』2巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想
2巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。
ハムカツと、好きなものに囲まれたみいちゃん
2巻は2012年4月から始まる。
最初の話は、みいちゃんがハムスターを飼い始める話。

キャバクラのお客さんが飼っているハムスターが繁殖してしまったらしく、軽々しく「飼う!」とみいちゃん。

みいちゃん、ちゃんとお世話できるの…?
と不安になった人は多いと思う。山田さんにもめっちゃ心配される。

みいちゃんは自分の夢も語る。「大家族のママになること」らしく、頑なに譲らない。

みいちゃんは死亡ENDが待っているのでどう考えても良くなさそうだが一方で、この話は山田さんがみいちゃんから救われる話でもある。
みいちゃんの影響を受ける山田さん

みいちゃんは汚い部屋ながらも自分が気に入ったものを買ったり、拾ったり(?)して、好きなものに囲まれて楽しそうに暮らしている。

…

対して山田さんは、教育熱心な母親のもとで育ち、好きなものを欲しがることに罪悪感を持ってきた人。

そんな山田さんが、何も考えずに「好き」を集めるみいちゃんを見て、少し気が楽になる。1巻からずっと「山田さんはなぜみいちゃんに構うんだろう?」と思っていたけど、山田さんのほうも、みいちゃんに何かを取り戻させてもらっているんだと思った。
「普通」に追いつこうともがく新人・ニナちゃん

2巻で新しく入ってくるのが、元会社員のキャスト・ニナちゃん。
最初はうまくやれているように見えるけど、だんだんボロが出てくる。

あちこちに体をぶつける、ミスが多い、言わなくていいことを言ってしまう等、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)を思わせる特性が描かれているニナちゃん。
そんなニナちゃんが自分のことを語るシーンが、2巻でいちばん刺さったセリフかもしれない。

みいちゃんほどバカじゃないけど平均よりは劣ってる
それを自覚できてしまう程度の頭は持ってる……
それって一番キツくない?
頑張って、頑張って、頑張って、やっと人並み。でも病名がつくほどではない。
作中で診断名が出てくるわけではないけれど(多分ADHDとASD)、今でいう発達障害のグレーゾーンっぽい描かれ方をしている。2012年当時は、今ほど「大人の発達障害」という言葉も広まっていなかった。
ニナちゃんは自分を投影してしまう…
という感想がレビューにとにかく多くて、みいちゃんよりもニナちゃんの方に自分を重ねた人がかなりいたみたい。先輩キャスト「モモさん」の

「10年後に頭が体に追いついてくる」という言葉が印象に残った。
みいちゃんと「普通の人」のあいだにあるグラデーションを見せてくれるのがニナちゃん。このキャラクターがいることで、作品の見え方がグッと広がった。
シゲオと、みいちゃんの「彼氏」マオくん

もうひとり、2巻で登場するのがお客さんのシゲオ(1.6m級奇行種はワロタ)。いわゆる「キモオタ系」のお客さんで、みいちゃんと関係を持つうちに本気になっていく。

というか自分を絶対に脅かさない、自分より「下」の女の子だから安心して好きになれる……そんなシゲオの考え方が生々しくも少し弱者男性の自分としては理解できる部分もあり、なかなかの恐怖体験ができた。
彼氏・マオくん

なんとみいちゃん、彼氏がいる。

ひどめの。
お金を持ってこないと暴れ、殴ったあとは急に優しくなる。典型的なDV男の「マオくん」である。
ある日、みいちゃんは顔を腫らして出勤してくる。周りは「警察に行きな」と言うけれど、みいちゃんは行かない。

しかも、マオくんのことを話すみいちゃんは、それほどつらそうには見えない。
1巻の「エッチの時だけは対等に接してくれる」という言葉ともつながっていて、みいちゃんにとっては、雑に扱われることすら「必要とされている」ことになってしまうのがつらい。

周りから見れば「そんな男、さっさと別れなよ」の一言で終わる話。
でも、その一言が届かない理由が、この後の話で見えてくる。
明かされる、みいちゃんの出生

ケガで休むことになったみいちゃんのお見舞いに、山田さんが行く。
そこで、みいちゃんの家族や生い立ちが語られる。
2巻でいちばん衝撃だったのはここ。

…

みいちゃんの両親は、実の兄妹だった。
……。
SNSでネタバレが流れてきて知っていた人もいるかもしれないけど、本編で読むとやっぱり重い。
しかも両親ともに、それの何がいけないのかをよくわかっていない様子。
母親もみいちゃんと同じように知的なハンデがありそうで、叱られたりバカにされたりすることを極端に嫌う。

子どもを育てられるわけがなく、めちゃくちゃな虐待をする始末。

家の中でいちばんまともなのはおばあちゃんだけど、そのおばあちゃんが気にしているのは、何よりも「世間の目」だった。
1巻を読んだときは「なんでみいちゃんはこうなんだろう」と思っていたけど、2巻を読むと「こうなるしかなかったんだ」と思えてしまう。
須崎先生の差し伸べた手と、「世間体」

さらに、みいちゃんの小学生時代も描かれる。
低学年のころは、クラスメイトと一緒になってみいちゃんをバカにするような担任もいた様子。

そんな中、3年生の担任になった須崎先生は、みいちゃんに支援が必要だと気づいて、特別支援学級を勧めてくれる。

ところが、母親は「娘をバカにされた」と激怒。

おばあちゃんも世間体を気にして受け入れない。
そして、母親から「先生はみいちゃんをバカにしていた」と聞かされたみいちゃん自身も、先生に心を閉ざしてしまう。結局みいちゃんは、そこから卒業までの3年間、小学校に行くことはないんだけど、
ここで支援につながってたら……
とね、全読者が思ったに違いない。1巻のラストで、同じようなハンデを抱えながら支援につながったムウちゃんの姿が描かれていたからこそ、この場面は余計に刺さった。みいちゃんとムウちゃんの違いは、周囲の環境に他ならないのかもしれない。

須崎先生は間違いなく「いい先生」だった。レビューでも「須崎先生がいい人すぎる」という声が多い。
でも、いい先生がいても、家族と本人が拒めば手は届かない。「良心的な大人」の限界まで描いてしまうのが、このマンガの容赦ないところだと思う。

その線引きや基準だって
これからの環境や社会次第で揺らいだり増えたりするんだろうね…
特別編「ニナちゃん36歳」
重たい話が続く2巻だけど、最後に救いがある。
描き下ろしの特別編では、10年後、36歳になったニナちゃんが描かれる。
ニナちゃんは会社員として働いていて、相変わらずミスはするけど、応援してフォローしてくれる先輩に恵まれている。
「10年後に頭が体に追いついてくる」という言葉が、ちゃんと回収されていた。
ニナちゃん、よかったね……!
「この番外編だけでも読む価値がある」という感想もあったけど、本当にそのとおりだと思う。
人を地獄に落とすのも人だけど、人を救うのも人。
ただ、ニナちゃんが報われる姿を見るほど、
「みいちゃんには、その“10年”が残されていない」
ということを思い出してしまって、素直に喜べない自分もいた。
『みいちゃんと山田さん』
2巻の考察と感想
みいちゃんの「理由」がわかってしまう
そんな2巻だった。
1巻では、みいちゃんのトラブルや、周りの人たちの冷たさが中心に描かれていた。
2巻ではそこから一歩踏み込んで、みいちゃんがなぜ「こう」なのかが、家族や生い立ちから描かれていく。
読んでいて感じたのは、みいちゃんの人生には「ここで誰かが手を伸ばしていれば」というポイントが何度もあったということ。
須崎先生は気づいていた。ムウちゃんのように支援につながる道もあった。
でも、そのたびに「世間体」や「プライド」や「周りの無関心」が、その道をふさいでいく。

そして、ニナちゃんという存在が「みいちゃんだけが特別なわけじゃない」ことを教えてくれる。みいちゃんほどじゃなくても、平均に追いつけなくて苦しんでいる人は、きっと自分の職場にもいる。「自分はその人にどう接しているだろう?」と、1巻に続いてまた考えさせられた。
ちなみに、2巻はレビューでも評価が割れている。
「過去編で偏見をあおるような内容になってしまった」「設定を盛り込みすぎ」という厳しい声もあって、たしかに出生の設定はかなりショッキングだ。

ただ個人的には、家族や周りの大人まで含めて「どうにもならなさ」を描き切っているところに、この作品の本気さを感じた。
正直、2巻は1巻よりさらに読む人を選ぶ内容だと思う。
でも、みいちゃんを「かわいそうな子」で終わらせないためにも、読んでおいてほしい巻だった。
是非、本編でしっかりと読んでみてね。
それでは。


