
1巻ではみいちゃんの「死」、2巻では「出生の秘密」、3巻では「中学時代の初恋」、4巻では「最初で最後の夏休み」、5巻では「ふたり暮らし」が描かれてきた『みいちゃんと山田さん』。
1〜5巻のネタバレ・感想はこちら。
【死ぬまでの12か月】『みいちゃんと山田さん』1巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
【出生の秘密】『みいちゃんと山田さん』2巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
【歪んだ初恋】『みいちゃんと山田さん』3巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
【最初で最後の夏休み】『みいちゃんと山田さん』4巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
【ふたり暮らし】『みいちゃんと山田さん』5巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
で、6巻。
5巻で始まったふたり暮らし。6巻ではみいちゃんも山田さんも夜の世界を離れて、「昼の世界」でまっとうに生きようとする。
このまま穏やかに暮らしていけたら……
と思っていた人ほど、この巻はキツいと思う。
6巻は、ふたり暮らしが壊れていく巻。そして、ずっと物語の“常識人”だった山田さんの危うさまで描かれる巻だった。
SNSで話題になった「現実が見えてきた」のシーンもこの巻に収録されている。
今回もそんな『みいちゃんと山田さん』6巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。
いつも通り、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事ではないのでご了承を。
見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。
『みいちゃんと山田さん』第6巻の基本情報

夜の街を卒業し、始まった二人の共同生活。山田さんの提案を受け、みいちゃんは「普通のバイト」を始めることに。しかし、初めて踏み出した“昼の世界”は、想像以上に険しいものだった――。これまでの「当たり前」が通用しない日々に翻弄され、時に衝突しながらも、みいちゃんは不器用な努力を続けてゆく。「山田さんと一緒にいれるのが、みいちゃん、すごく幸せなんだ」手探りで築く「まっとうな日常」。正反対な二人が、本当の“幸せ”のカタチを模索する、十月の空が広がる。
収録されているのは第27話〜第31話。
ちなみに6巻は、通常版には描き下ろしのおまけ漫画がなく、絵本付きの特装版も出ている。おまけまで読みたい人は特装版がおすすめ。
『みいちゃんと山田さん』6巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想
6巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。
シゲオのプロポーズと、まさかの成長

6巻はシゲオから始まる。
デリヘルでもみいちゃんの常連だったシゲオは、みいちゃんの「卒業パーティー」を勝手に開き、婚姻届を差し出してプロポーズ。

いや、話が飛びすぎでは……
以外にも(?)みいちゃんは断る。
さらには、シゲオが山田さんのことを悪く言ったことで、みいちゃんは本気で怒る。

…

ここでシゲオは、みいちゃんにも自分の意思があり、自分の世界があるんだという、当たり前のことにやっと気づく。

…

みいちゃんを「自分を絶対に否定しない存在」として見ていたシゲオが、ここで少しだけ大人になる。

…

レビューでも「シゲオを見直した」「シゲオが一番成長した」という声がかなり多くて、2巻からずっとネタキャラ扱いだったシゲオが、まさかの“光属性”に。ちょっと笑いつつ、ちょっとグッときた。
みいちゃん、昼の世界へ

山田さんの後押しで、みいちゃんはデリヘルを辞め、「普通のバイト」を探し始める。

履歴書を書いて、面接の練習をして……と、山田さんは本当に根気強くみいちゃんに付き合う。

というか日に日に忌み嫌っていた母親に近づいていく山田さん。
そしてみいちゃんは、パン屋さんでのアルバイトに受かる。
おお、よかった……!
パン屋のおじさんは、この作品では珍しい「普通にいい人」。
みいちゃんもみいちゃんなりに、一生懸命がんばろうとする。

……が、昼の世界は、みいちゃんにとって想像以上に険しく…。

善意で雇ってくれた人の手を、結果的に振り払ってしまう。
2巻の須崎先生のときと同じ構図が、ここでもまた繰り返される。
山田さんが「お母さん」になっていく

6巻でいちばん怖かったのは、みいちゃんよりもむしろ山田さん。
みいちゃんに常識を身につけさせようと、山田さんはルールを決め、一つひとつ注意していく。

…

でもそのやり方は、山田さんがずっと嫌ってきた、山田さんの母親とそっくりになっていく。してもらったことよりも、自分の期待通りにできていないこと、相手の至らないところに反応するセンサーが鋭すぎる。
イライラが積もった山田さんが、みいちゃんに「タンポポでも摘んでなよ」と言い放つシーンもある。

それ、1巻でみいちゃんを馬鹿にしてた人たちと同じじゃ……
1巻で、ほかのキャストが「みいちゃんにはお刺身にタンポポを乗せる仕事くらいしかできない」と言っていたのを思い出すと、この一言はかなり重い。
本人はまったく気づいていないけど、山田さんもまた、みいちゃんを「下」に見ていた。
「相手のため」と思ってやっていることが、相手を縛り、見下すことに変わっていく。5巻の付箋から続いていた不穏さが、ここではっきり形になる。
「現実が見えてきた」

そして、決定的な出来事が起こる。
みいちゃんが、お金のために山田さんの部屋に知らない男を連れ込んでいた。

ゴン詰めされたみいちゃんは逆上。

その瞬間、みいちゃんの絵柄が、それまでのかわいいデフォルメから、リアルな顔に切り替わる。

ひっ……
SNSでもかなり話題になったシーンだけど、本編の流れの中で読むと、ゾッとするくらいの破壊力がある。
この演出がすごいのは、「みいちゃんの本当の姿」を見せているだけじゃないところ。
山田さんの目にかかっていた「フィルター」が外れた瞬間を描いていて、それはつまり、山田さん自身もずっと自分の見たいみいちゃんしか見ていなかったということでもある。
レビューでも、シゲオから見たみいちゃん、山田さんから見たみいちゃん、ほかの人から見た山田さん……と、視点ごとに描き分けられていることに気づいたという声が多かった。人は見たいようにしか人を見ていない。この作品が1巻からずっと描いてきたテーマが、ここでひとつにまとまった気がする。
宝物箱と「なんで生きてるの?」

もうひとつ、6巻で忘れられないのがみいちゃんの宝物箱のシーン。

マオくんにはよく「なんで生きてるの?」と聞かれていた、とみいちゃんは言う。

でも宝物箱を作っていて、みいちゃんは答えを見つける。宝物を、思い出を集めるために生きてるんだ、と。
そして、山田さんに聞き返す。
「山田さんはなんで生きてるの?」
その宝物箱の中には、山田さんとの思い出がたくさん詰まっている。
山田さん自身も答えられなかった問いに、みいちゃんは自分なりの答えを持っていた。
みいちゃんは、山田さんと暮らした日々の中でちゃんと成長していたんだと思うと、このあとの展開がよけいにつらい。
新幹線のホームで

結局、ふたり暮らしは終わる。
みいちゃんは故郷の宮城へ、山田さんは実家へ帰ることになる。

新幹線のホームで、山田さんはみいちゃんに何かを伝える。
でも、その吹き出しは空白のまま。
なんて言ったの……?
レビューでも「何て言ったんだろう」という声がとにかく多かった。
小説ではできない、漫画ならではの演出だと思う。

さらに、山田さんが何気なく段ボールにしまったペンチ。3巻でイヤリングを作ったときのあのペンチが、1巻冒頭の場面とつながっているのでは……という考察もレビューで盛り上がっていた。
『みいちゃんと山田さん』
6巻の考察と感想
善意だけでは、人は救えない
そんな6巻だった。
山田さんは、本気でみいちゃんのために動いていた。パン屋のおじさんも、善意でみいちゃんを雇ってくれた。
それでも、うまくいかなかった。
そして6巻は、これまで読者が「常識人」として安心して見ていた山田さんの危うさを描いた巻でもあった。
母親から逃げたはずの山田さんが、みいちゃんに対して母親と同じことをしてしまう。手を差し伸べたつもりが、最後には手を上げてしまう。

誰かを「助ける」ことと、自分の理想を「押しつける」ことは、紙一重なんだと思う。

ただ、山田さんを責める気にもなれなかった。
レビューでも「自分だったら絶対に一緒に暮らせない」「山田さんはむしろよく頑張った」という声がとても多い。みいちゃんと向き合うことの難しさを、ここまで真正面から描いた作品はなかなかないと思う。
次の7巻は、いよいよ最終巻。
宮城に帰ったみいちゃんに何が起こるのか。1巻の冒頭で描かれた結末に、物語はついにたどり着く。
是非、本編でしっかりと読んでみてね。
それでは。



