
かわいい絵柄からは想像できない酷い内容、と話題沸騰の「みいちゃんと山田さん」。
こんなもん映像化するな
とか
知的障害や境界知能の人をからかうレッテルとして「みいちゃん」が使われてるので、アニメ化するとさらに酷くなるんじゃなかろうか?
など様々な観点で話題になっている。
ちなみに物語の冒頭で、主人公のみいちゃんが若くして死ぬことが明かされる。

もともとはKindleインディーズで話題になり、マガポケ(講談社)で連載された本作品。SNSで流れてきたコマを見たり、作者の亜月ねねさんが超炎上したりと話題の絶えない作品で、気になっていた人も多いんじゃないだろうか。
今回はそんな『みいちゃんと山田さん』1巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。
ただし、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事をご期待の方には、申し訳ないがご期待に沿えない。
このマンガの面白さ(というか、刺さり方)は、実際にページをめくって味わうものだと思うので、見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。
『みいちゃんと山田さん』第1巻の基本情報

2012年、新宿。夜の街でキャバクラ嬢として働く山田さんは、何をやっても“ちょっと足りない”新人・みいちゃんと出会う。ヤル気と元気はあるものの、漢字も空気も読めないみいちゃんは、周りから馬鹿にされ「可哀想」のレッテルを貼られてしまう。それでも、健気に働くみいちゃんの姿に、山田さんは徐々に心を惹かれていき―――。不器用で愛くるしい女の子たちを巡る、夜の世界の12か月。
『みいちゃんと山田さん』1巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想
1巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。
1ページ目で告げられる「みいちゃんの死」

物語は、山田さんがみいちゃんを回想するところから始まる。

そしてすぐに、みいちゃんがもうこの世にいないことがわかる。
普通なら物語のクライマックスに置くような出来事を、あえて一番最初に持ってくる。
これのせいで、この後どんなに微笑ましいシーンが来ても
でもこの子、死んじゃうんだよな
という前提が頭から離れない。この構成が上手くて、そしてとにかく残酷だった。
ちなみに主人公たちが働くのはキャバクラで、

キャバクラの予備知識が増える!
というレビューも目立った。

ちなみに物語は山田さん(偽名)の視点を通して描かれることが多い。
漢字も空気も読めない新人・みいちゃん

舞台は2012年の歌舞伎町。

キャバクラ「Ephemere(エフェメール)」に体験入店してきたのが、みいちゃんこと中村実衣子だ。

見た目はかわいい。愛想もいい。やる気もある。
でも、

漢字が読めない、

一般常識が皆無、

段取りが覚えられない。
ドリンクをこぼし、客の前でズレた発言をし、周りのキャストからは露骨に馬鹿にされる。
そんなみいちゃんを、大学に通いながら働く先輩の山田さんが、なんだかんだでフォローしていく。
作中ではっきり明言はされないものの、みいちゃんには知的なハンデがあることがほのめかされていく。「ちょっと足りない」の“ちょっと”が、夜の街ではどれだけ致命的か。1話の時点でもう胸がザワザワした。
助けてもらう必要があるのに、助けられることは受け入れられない

漢字が読めないみいちゃんのために、同じく大学生キャストのココロちゃんが勉強を教えることになる。
ところが、、

間違いを指摘されるとみいちゃんは怒ってしまう。
人懐っこいのに、プライドは高い。

助けてほしいのに、助けられることは受け入れられない。
結局、勉強会はわずか4日で終了。

ここで描かれるのは「みいちゃんが悪い」でも「ココロちゃんが悪い」でもない、どうしようもないすれ違い。

さらに、教育熱心な母親に育てられた山田さん自身の過去もチラッと覗く。

山田さんもまた“何か”を抱えた人なんだということがわかってくる。
「自分より下」を見て安心したい人たち

みいちゃんがSNSに写真を上げてトラブルになったり、

同僚の桃花さんから嫌がらせを受けたり……と、店の中の空気はどんどん悪くなっていく。
しかしキャストのそれぞれが、みいちゃんに「いてほしい」と思うようになっていく。

ざっくり言えば、「自分より下」を見て安心したいから。

これは夜の街に限った話じゃないと思う。
学校にも職場にも、形を変えて普通にある。読んでいて自分の中にも心当たりがあるような気がして、ちょっと嫌な汗をかいた。
そして、みいちゃんの指名が増えた“理由”も、この巻で明らかになる。

何が起きていたのかは本編で確かめてほしいけど、ここもなかなかキツい。
ゴミ箱から拾ったチョコレート
客足が落ちる2月、店はバレンタインイベントを開く。

みいちゃんも手作りチョコを用意するんだけど、これが見た目も味もひどい出来。

…

…

案の定ゴミ箱行きになったそのチョコを、山田さんは拾って食べる。

1巻で一番グッときたのはここ。
同じような苦しみを経験した山田さんだからこそ、あの場面でみいちゃんを助ける(心理的に)という判断・行動ができたんだと思う。
自分の辛い経験が他者の役に立つことで、その経験に意味が生まれることもあるよね
みいちゃんの他人との関わり方

みいちゃんがポツリとこぼす、「人との関わり方」についての言葉がとにかく悲しい。

みんなみいちゃんのことバカとか可哀そうって見下してるけど、
エッチの時だけは対等に接してくれるんだ
この一言で、みいちゃんがこれまでどんなふうに生きてきたのかが一気に見えてしまう。

ちなみに風俗やソープなどで働く人(性産業従事者)における精神障害の有病率は一般人より高いらしい。
研究報告「性産業従事者(commercial sex worker)に見られる心理的傾向および問題」によると
- 幼少期のトラウマ → 性産業への従事 → さらなるトラウマのサイクル
といった心理パターンが報告されているようだ。みいちゃんの過去・経験を考慮した助言(多分そんなものはない)ではないと、何にもならない。つまり、ここでの山田さんの忠告は、みいちゃんにとっては毒にも薬にもならないのが辛い。
幼なじみ・ムウちゃんと「支援」を拒むみいちゃん

同郷の幼なじみ・ムウちゃん。
みいちゃんと一緒に上京してきたらしいが、万引きを何度も繰り返し、執行猶予中にまた万引きをしてしまたためとうとう刑務所に行ってしまったとのこと。

…

しかし、出会う人に恵まれたようで、

ムウちゃんは知的障害の診断を受け、支援を受けながら作業所で働いている。

適材適所か、他の人なら続かないような単純作業をこなすのが得意であり、自分も他人も満足な環境で穏やかに働けているようだった。

安定した生活を送っているムウちゃんに対して、劣るまいと自慢にもならないことで張り合おうとするみいちゃん…。
すこし無理していそうなところを察してかムウちゃんはみいちゃんにも支援を受けることを勧めるんだけど……

みいちゃんはそれを拒絶する。
(さすがにムウちゃんも言い方も直接的すぎる…)

…

なんて会話だ…
ここがこの作品の核心のひとつだと思う。
同じようなハンデを抱えていても、支援につながれた人と、つながれなかった人で、人生がこんなにも変わってしまう。ムウちゃんの存在は、みいちゃんに「あり得たかもしれない別の人生」を突きつけてくる感じがするのかもしれない。

…

スタート地点と能力値が同じでも
出会う人と自分の選択で結末は大きく変わる
『みいちゃんと山田さん』
1巻の考察と感想

「面白い」より先に「しんどい」が来る
という感じの1巻だった。ただ、ページをめくる手は止まらない。ゆるくてかわいい絵柄と、描かれている内容の重さのギャップがとにかくすごい。この絵柄だからこそ読めてしまうし、この絵柄だからこそ余計に刺さるものがある。
そしてこのマンガのうまいところは、誰かひとりを“悪者”にして終わらせないところだと思う。
みいちゃんを馬鹿にする同僚も、手を差し伸べて途中で諦める人も、どこか自分と重なる部分がある。
「自分が同じ職場にいたら、山田さんのように接することができただろうか?」
と考えると、正直なところ自信がない。
知的障害や境界知能、貧困、性的な搾取、福祉につながれないこと。
扱っているテーマは重いけれど、説教くさくならず、あくまで「みいちゃん」というひとりの女の子の物語として描いているからこそ、読後にずっと残るものがある。

万人に気軽におすすめできる作品ではない(アニメ化で「こんなもん映像化するな」とか、とんでもなく炎上してるし)。
でも、読んでよかったと思える人がいる作品であることは間違いない。
是非、本編でしっかりと読んでみてね。
それでは。


