
『ピアノの森』から生まれた新しい物語、『もうひとつのピアノの森 整う音』。
1巻では、ショパンコンクールのファイナリストだった向井智が、調律師として会社員生活を送る中で、理不尽な扱いを受ける姿が描かれた。
1巻のネタバレ・感想はこちら。
【ピアノの森 続編】『もうひとつのピアノの森 整う音』1巻 ネタバレ・画バレ含む考察と感想
で、2巻。
向井くん、まだあの職場で消耗してるのかな……
と心配しながら読み始めたけど、2巻は一気に面白さが加速した。1巻のしんどさが「会社員として働くこと」そのものから来ていたのに対して、2巻で向井くんがぶつかるのは「本当にやりたい仕事」の中での困難。だから読み応えはありつつも、読後感はかなり爽やかだった。
今回はそんな『もうひとつのピアノの森 整う音』2巻の見どころを、ネタバレ・画バレを含めて紹介していく。
いつも通り、セリフを一言一句文字に起こすようなネタバレ記事ではないのでご了承を。
見どころをいくつかピックアップする形でまとめていく。
『もうひとつのピアノの森 整う音』第2巻の基本情報

一ノ瀬海の専属調律師になるという目標を胸に、調律師としての道を歩み出した向井智。彼は自身のこだわりと会社員としてのノルマに振り回されながら成長していく。向井は、音大の定期公開試験で、音大生・神森雅の演奏を聴き衝撃を受け…?
作者は『ピアノの森』と同じ一色まこと先生。
モーニングで連載中の作品で、2巻には第10話「神森雅」から第19話「1本分の音のズレ」までが収録されている。
『もうひとつのピアノの森 整う音』2巻
ネタバレ・画バレ含む考察と感想
2巻の個人的な見どころは以下のような感じだった。
神森雅の人格とピアノ

1巻で登場した音大生の神森雅。
性格はまだ未熟だけど、そのピアノには普通ではない、人を惹きつける「なにか」がある。
ムラッ気はあるものの、耳の肥えた審査員を唸らせてしまう。そんな不思議な魅力を持ったピアニストだ。

2巻では、そんな雅のバックグラウンドが描かれる。
跡継ぎである長男が厳しく育てられた一方で、雅は蝶よ花よと褒められて育ってきた。

でもそれが、逆に雅の自信にはつながらなかったというのは皮肉な話である。

「お金があればすべて解決する」という母親の教育方針のもと、雅は大きな失敗や挫折を経験しないまま大人になった。
その結果、自己肯定感は激低。

関わる人間はみんな母親の息がかかっていて、お金のために自分をよく評価しているんだと思ってしまう。だから自分も含めて、誰のことも信じられない。
それは、しんどいよなぁ……
ここは普通に同情した。
親心で「失敗する前に手を貸してあげたい」と思ってしまうのは、仕方ないことだと思う。
でもそれが子どもにどんな影響を及ぼすのか、わかっていない親も多い。
『みいちゃんと山田さん』の、山田さんの母親を思い出した人もいるかもしれない。

状況によっては仕方ない場面もあると思う。でも、失敗から学べることもある。
先回りして道をならすのではなく、「見守る」というスタンスで子どもに向き合うべきなんじゃないかなぁ、と考えさせられた。
会社員としての調律をマスターした向井くん

1巻で理不尽にも思える扱いを受けていた向井くん。
2巻では、その状況がガラッと変わる。

…

…

向井くん、顔こわっ……!
向井くんは、本来の自分の仕事への向き合い方、本当にしたい仕事をいったん封印する。
そのうえで依頼主の要求を完璧に理解して、最大効率で仕事を進めるようになる。
これが、とにかくかっこいい。子どもを泣かせてしまうくらいの鬼の形相で仕事に取り組む向井くんには、頼もしさすら覚えた。
前作『ピアノの森』では、好感度はあったけどパッとしなかった脇役のキャラクター。

その向井くんを、ここまで魅力的に描けてしまう。
一色まこと先生の手腕というかなんというか、面白いマンガ描いてくれるなぁ…と改めて思った。
「ピアノセレクト工房」への転属
考え方も、仕事への向き合い方も、集中力の使いどころも変えた向井くん。

周りからの信頼を獲得して、誰からも必要とされる人材になる。

……と思ったら、その途端に荻さんから言い渡されたのが、「ピアノセレクト工房」への転属。
この工房、配属された人は1年以内に行方不明になったりノイローゼになったりするという、いわくつきの場所。

「鬼の重三」を筆頭に、厄介な爺さんたちがいるらしい。
やっと報われたと思ったのに……!
ところが、実際に会ってみると、愉快で融通の利くお爺さんばかり。

しかも訪問調律と違って、移動に時間を取られることなく、ピアノの調律に集中できる環境だ。

向井くんにとっては、まさに最高の職場……に思えたんだけど。
わがままなピアニスト・満月かれん

工房での向井くんの最初の仕事が、お騒がせで有名なピアニスト「満月かれん」が納得するピアノを調律すること。

かれんの要求は、とにかく細かい。

ほとんどの調律師はファーストコンタクトで匙を投げてしまうし、続いたとしても無理難題ばかり。
傍から見たらクレーマーにすら思えてしまうような要望だ。

要望は絶対であり、決して曲げない。
言い方も指示も強め。読んでいるとパワハラ上司を思い出してくらくらする。
しかし、ただのクレーマーではない模様。

一般客を相手にしていたときは気づかれなかった微差の音の変化に気づく満月かれん。

この人も、自分と同じように人並み外れた耳を持っているのでは?
向井くん以外には気づける人もほとんどいない、とんでもなく細かい音のズレ。
それぞれの領域に特化したベテラン職人たちのアドバイスを聞きながら、向井くんはかれんのピアノに向き合っていく。
「同じ耳」を持つ者同士のやりとりがどうなっていくのか、ここはぜひ本編で確かめてほしい。
『もうひとつのピアノの森 整う音』
2巻でキャラクターが弾いた曲
個人的に好きだった曲を紹介しておきます。
ドビュッシー
月の光
シュトラウス=グリュンフェルト
ウィーン夜会 OP56
リスト:愛の夢第3番
『もうひとつのピアノの森 整う音』
2巻の考察と感想

面白さが一気に加速した2巻
そんな印象だった。
1巻のつらさは、向井くんが悪いのではなく、「会社員として働くこと」が有能で実績のある向井くんにとって良くない状況だったことから来ていた。対して2巻で向井くんが向き合うのは、自分が本当にやりたい仕事の中での困難。

だから読み応えはしっかりありつつ、読み味も読了感もとても爽やかだった。
そして、ずっと謎だった荻さんの狙いも、2巻でやっと見えてくる。

ずば抜けて耳がいいことはわかっているから、満月かれんの調律師としてやっていけるように、限られた時間で多くのことをこなす経験をさせておく。

…

1巻での理不尽な日々にも意味があったんだと思えて、少し救われた気持ちになった。
荻さん、そういうことだったのか……!
今後の展開がますます気になる2巻だった。

是非、本編でしっかりと読んでみてね。
それでは。


